歯ぎしり、食いしばり
無意識の噛みしめがもたらすリスクと、お口と身体を守る総合アプローチ
「朝起きた瞬間から、あごや頬の筋肉が疲れていて重苦しい……」
「家族から『寝ているときにものすごい音で歯ぎしりをしているよ』と指摘された」
もしあなたがこのようなお悩みを抱えているとしたら、それは睡眠中や日中の無意識のうちに行っている「歯ぎしり」や「食いしばり」が原因かもしれません。
私たちは日常的に食事やおしゃべりをしていますが、その際に上下の歯が接触している時間は、1日のうちで合計してわずか15分から20分程度だと言われています。
それ以外の時間は、上下の歯の間に1〜2ミリほどのわずかな隙間があり、筋肉がリラックスしているのが本来の正常な状態です。
しかし、現代ストレス社会を生きる多くの方が、寝ている間や日中の集中している時間などに、無意識のうちに歯をギューッと強く噛みしめたり、横にギリギリと擦り合わせたりしています。
これらの行為は、専門的には「ブラキシズム」と呼ばれ、放っておくと大切な歯を少しずつ破壊し、あごの関節を痛め、さらには頭痛や肩こりといった全身の不調へと繋がっていくことが分かっています。
歯ぎしりや食いしばりは、本人が「意図して行っているわけではない」からこそ、ご自身の力だけで止めることが非常に困難です。
岡崎市のヒロデンタルオフィスでは、お身体への優しさを第一に考えたマウスピース(スプリント)による保護や、噛みしめる筋肉の過度なパワーを和らげるボトックス治療、日中の癖を改善していくカウンセリングなど、多角的なアプローチでお口全体の健やかな調和を取り戻すお手伝いをいたします。
歯ぎしり・食いしばりがお口と身体に及ぼす「6大リスク」
「歯を噛みしめるくらい、大したことではないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、睡眠中の歯ぎしり・食いしばりの力は、日中に意識して出せる最大の力を遥かに超え、ご自身の体重の数倍(時に数百キロ)に及ぶ凄まじい破壊力に達することがあります。
この巨大な力が毎晩のようにかかり続けると、お口の中や全身に以下のような深刻な悪影響(リスク)がじわじわと現れ始めます。
歯がすり減る・欠ける・割れる(歯根破折)
毎日強い力で擦り合わせることで、歯の表面の白いエナメル質が少しずつ摩耗し、内部の黄色っぽい象牙質が露出してきます(咬耗)。
また、過度な応力が歯の根元に集中すると、むし歯でもないのに歯の根元が「くさび状」にポロリと欠けてしまうことがあります。
最悪の場合、健康だった歯の根っこが真っ二つに割れてしまい(歯根破折)、抜歯を余儀なくされるケースも少なくありません。
知覚過敏がひどくなる
歯ぎしりによって歯の表面が削られたり、根元に微小な亀裂が入ったりすると、冷たいお水やハブラシの刺激が歯の内部の神経(歯髄)へとダイレクトに伝わりやすくなります。
「キーン」としみる知覚過敏の症状が慢性化し、通常の治療を行ってもなかなか痛みが引きにくくなります。
歯周病の進行が急激に加速する
歯周病は細菌による感染症ですが、ここに歯ぎしりによる「揺さぶるような強い力(外傷性咬合)」が加わると、歯を支えている周囲の骨(歯槽骨)の破壊が驚くほどのスピードで進行します。
歯周病の炎症と過度な力が組み合わさることで、歯が急速にグラグラになり、寿命を短くしてしまいます。
詰め物・被せ物が何度も外れる、壊れる
歯科医院でどれほど精密にセラミックや金属の詰め物・被せ物を接着しても、毎晩のように限界を超えた圧力が加わると、接着剤が破壊されて何度も外れてしまったり、人工物が欠けたり割れたりしてしまいます。
また、近年普及しているインプラントに対しても、クッション(歯根膜)がないためダイレクトに骨へ強い力が伝わり、インプラント周囲の骨が溶ける原因になります。
顎関節症を引き起こす
強い噛みしめ圧力は、歯だけでなく「あごの関節」にもそのまま伝わります。
あごの関節の内部にある軟骨(関節円板)が圧迫されて位置がズレたり、周囲の組織が捻挫を起こしたりすることで、「あごが痛い」「口が大きく開かない」「あごを動かすと音が鳴る」といった顎関節症の症状を誘発します。
慢性的なくり返す頭痛・肩こり
あごを閉じるための大きな筋肉(咬筋や側頭筋)が毎晩フル活動して疲弊するため、筋肉の中に乳酸などの疲労物質が溜まり、ガチガチに凝り固まります。
側頭筋は頭の横に広がる筋肉であるため「締め付けられるような頭痛」を引き起こし、咬筋の緊張は首や肩、背中の筋肉へと連鎖して「頑固な肩こり」の原因となります。
あなたは大丈夫?歯ぎしり・食いしばりの「セルフチェック項目」
寝ている間の行為は自分では確認できませんが、お口の中や身体には、歯ぎしり・食いしばりを行っている明確な「痕跡(サイン)」が残ります。以下の項目に心当たりがないかチェックしてみましょう。
※あてはまる項目が多ければ多いほど、無意識のうちにお口の中に過度なストレスをかけ続けている可能性が高くなります。早期に適切な保護アプローチを行うことが、大切な歯を守る鍵となります。
当院が実践する、お口と大切な歯を守るための総合的な治療アプローチ
歯ぎしりや食いしばりは、脳の深い部分で行われている無意識の反射行動であるため、「完全にゼロにする(消し去る)」ことは現代医学でも極めて困難です。
そのため当院の治療方針は、「発生する有害な力をコントロールし、歯やあごの組織への負担を安全なレベルにまで下げて調和させる」ことを目的としています。
患者さまの状態に合わせて、以下のアプローチを多角的に組み合わせて提供いたします。
マウスピース(ナイトガード/スプリント療法)
歯ぎしり対策として最も基本的で、世界的に認められているアプローチが、睡眠中にオーダーメイドのマウスピース(ナイトガード)を装着していただく方法です。
当院では、硬質で精密なプラスチック素材を用い、患者さまお一人お切りの理想的な噛み合わせを考慮した専用の装置を作製します(公的医療保険の範囲内で行えます)。
歯の摩耗・破折の防止
上下の歯が直接擦れ合うのを物理的に遮断します。身代わりとしてマウスピースが削れてくれるため、あなたの大切な本物の歯がすり減ったり割れたりするのを健やかに防ぎます。
力の分散による組織の保護
噛みしめたときの衝撃が全ての歯にバランスよく分散されるため、特定の歯の知覚過敏や、あごの関節(軟骨)への過度な圧迫を和らげます。
ボトックス(ボツリヌストキシン療法)
「マウスピースを入れても、朝起きると顎がガチガチに痛む」「寝ている間に無意識にマウスピースを外してしまうほど食いしばりが強い」という患者さまに対して、当院では自費診療のアプローチとして「ボトックス(ボツリヌストキシン療法)」をご用意しています。
咬筋(噛みしめる筋肉)のボリュームダウン
強く噛みしめすぎて肥大化してしまった頬の筋肉(咬筋)に、リラックス効果のあるお薬を注入します。
これにより、夜間の激しい歯ぎしりのパワーそのものを、日常生活に支障のない適正なレベルへと根本からパワーダウンさせることができます。
慢性頭痛・肩こりの緩和
筋肉の過度なこわばりがふんわりと解き放たれるため、あご由来の頑固な頭痛や肩こり、首の重苦しさがスッと楽になる変化を多くの方が実感されます。
行動変容療法(TCHの是正)
日中の起きている時間に行っている「食いしばり」や「歯の接触癖(TCH)」に対しては、患者さまご自身が「今、歯が当たっている」と気づき、それを手放していくお口のトレーニングをサポートします。
具体的な進め方として、パソコンの画面や鏡など、日常でよく目にする場所に小さな目印のシールを貼っておきます。
それを見た瞬間に「あ、今歯を合わせていたな」と気づき、肩の力を上下の歯を離す習慣を脳に記憶させていきます。
この小さな意識の積み重ねが、夜間の歯ぎしりの頻度を抑える土台となります。
